南洋の喫茶店 オセアニア現代誌 ■高橋康昌著・筑摩書房・1986年■ |
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【前口上】世事に疲れてくると、「ああ、南の島に暮らしたい」といつも思う。カッと照りつける太陽、白っぽく照り返す細く曲がりくねった島の道、色濃く茂る緑の密林、リーフに囲まれて穏やかな鏡のように輝くラグーン…。日の出ともに起き、人気のないまだひんやりした浜辺を散歩し、太陽が高くなれば開け放した家の中で本を読んで過ごす。夕には再び浜に足を運び日の入りをながめながらその日の終わりをしっかりと確認する。一日一日を愛おしみながら。こういう生活をしてみたい、と。しかし、で、どうやって食っていくの?という現実に引き戻されて白昼夢は終わる。この本には、世界地図では水色に塗り潰されて存在さえもが記されないオセアニアの小さな島々の、国家レベルでの「どうやって食っていくの?」という喫緊のさまざまな課題がレポートされている。 |
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この本の刊行から17年、21世紀に突入してすでに3年。はたしてどうやって食っているのやら…。と、今年4月28日号の『アエラ』に「変わる南洋の楽園」と題して、「その後」がレポートされていた。リン鉱石は採り尽くされ海外投資はすべて失敗、国家財政は破綻し、ほとんど無収入の貧困国へ転落してしまったようだ。今春には唯一の国際電話回線が洪水で不通になり、「ナウルが行方不明になった」と騒がれた。現在はボートピープルなどの受け入れをオーストラリア政府に代わって引き受けることで援助金を得たりしているという。南の島のケセラセラが通用しない、非情な国際力学に翻弄される現実だった。 (か)2003.6.08 |