【第3回】
ブルネイ・長男の嫁
「ブルネイダルサラム」はボルネオ島にある小さな国。トランジットの関係で行ったことがある。行く前から物価が高く安いホテルがないとか、あと金持ちの国だとかいう噂は聞いていた。が、物価は安かった。ここには東南アジアで見かける物乞いや、子供が子供を抱いている姿はない。ブルネイで唯一の安い宿となるYHに初めの何日かだけ運良く泊まれた。その後は、知り合ったおばさんの家にお世話になることになった。
 中心地からちょっと離れたその家は引っ越してきたばかりで、大理石のような石の床、高い天井にはファンがまわり涼しい家だった。インド系のお母さんとマレー系のお父さん。子供は11人。ほとんどの子供は結婚したり仕事で海外に行ったりで家には何番目かの息子さんとと一番下の娘さん、あと長男夫婦がいる6人家族だった。
 年の近いこともあり娘さんとと長男のお嫁さんと仲良くなり、寝起きは娘さんの部屋でして彼女が学校に行っているあいだはお嫁さんと過ごす。暑い国の朝は早いので朝7時30分にはみんな仕事や学校に出かけて行って家にはお嫁さんと二人だけになる。ひんやりした床に座ってお喋りし、お昼ごはんを作り、午後からは寝室のダブルベットで二人で昼寝をするという生活を送っていた。娘さんとはイギリスのバンドの話などで盛り上がった。学校の話の中で、授業で日本はしょっちゅう地震が起こっていると聞いたけど本当なのか?と聞かれた。まさか侍がいるとは教えられてなかったけど、毎日のように地震があると思っていたらしい。最近、日本のVIPがブルネイに来たとき、通訳の人が同行していたけど日本人って英語が話せないの?って不思議そうに聞かれた。ブルネイでは英語で授業があったりするのでほとんどの人が英語を話す。
 しかし長男のお嫁さんはマレーシア出身でほとんど英語が話せない。でも不思議と話が通じ仲良くなった。マレーシアからお嫁に、それも11人姉弟の家に来るなんてさぞかし大変なんだろうと勝手に思っていたけどそうでもないらしい。義理の親も旦那さんも優しいという。しかし結婚式の写真を見せてもらったがその華やかな写真の中にマレーシアの両親と姉弟の姿はない。パスポートの関係で来れなかったという。マレーシアの家族ともたまにしか会えないから寂しいだろうな。いくら近くても国境というのはやはり何かと大変なものなんだと思った。
 る日、家を離れている姉弟達が帰ってきた。たまーにこうして実家に戻ってくるらしい。こういう日はみんなで食事をするみたいで鶏が一羽用意されていた。もちろん全員で家族団らんかと思っていたら、長男夫婦に食事に誘われて3人で出かけた。出かけて大丈夫なの?と心配になって聞いたら、何の問題もないという。でも「長男の嫁」という任務はないのかなぁ。日本だとこういう日に出かけちゃまずいでしょ。大変なことになるよ。何十年にも渡ってこの日のことを言われ続ける可能性だってあるのに。出かけている間に何を言われることやら……こういう話題って必ず盛り上がるんだよねぇ、妙に一致団結したりしてさ。まぁ、うちの家は嫁と家族もうまくいっていると旦那さんが言っていたから大丈夫なんでしょう。ブルネイって嫁姑問題ってないんだなぁと感心していた。
 いつもの様にお嫁さんとひんやりした床でゴロゴロしていたら彼女が親戚からもらったという漢方薬を見せてくれた。漢字で書いてある。子供ができるようになる薬。へぇ、やっぱり「長男の嫁」って大変なのねぇ。とりあえず「孫」への期待は大きいみたいで何となく可哀想になってしまった。モスリムだけどスカーフで髪を隠すことなくジーンズ姿で出かけ、海外のビーチでは水着で泳ぐのが好きという現代的な彼女にもやっぱりこの様な「嫁」問題がもちろんあるんだなぁ。神様にお嫁さんがいたら神といわれる旦那はどうやって彼女たちを救い嫁姑問題を解決したのかな?あーでも解決できないから今世紀もこの問題が残ってるんだよね。
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